金剛禅の修行の手段として少林寺拳法を修練し、動禅いわば易筋行を行います。易筋行とは修練によって肉体を変化させるということです。もちろん肉体だけではなく、同時に心を変化させ、ついては自分の生き方を変えるための修行であります。 動画については、金剛禅公式YouTubeよりご覧いただくことができます。 https://www.youtube.com/c/shorinjikempokongozenofficial
相手の可能性を心の底から信じる
人は可能性の種子であり、誰もが成長する因子を有している。そして諸行無常と言われるように、小さくとも絶えず変化は起きている。指導者に求められるのは、相手が必ず成長できると心の底から信じ、最初の一歩を踏み出せるよう後押しすることではないだろうか。
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文 | /冨田 雅志 |
演武者 | /冨田雅志 大拳士六段 |
生身の自分を高める
どれだけ頑丈な鎧や強力な武器を身にまとおうとも、生身の自分が変わらなければ、本当の意味で強くなったとは言えない。外見のみにこだわることなく、本来の自分と向き合い、自分を高めていく努力をすることが必要である。
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文 | /冨田 雅志 |
演武者 | /冨田雅志 大拳士六段 |
受けて応じる修練を通して教えを身につける
攻撃を“受ける”、“受けて応じる”、という技術修練を通して教えを身につける。
護身の技術を身に付けることが目的ではない。あくまでも、金剛禅の教えを身につけることが目的でなくてはならない。
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文 | /中川 純 |
演武者 | /飯野貴嗣 准範士七段 |
修行により高められるもの
健康や幸福には肉体的要素、精神的要素、社会的要素が必要であり、これらは本来修行により高めることができるものである。しかし、技の細部に囚われる、人によって捕り方が異なる法形において自己のやり方以外を認めない等の状況において、これらの要素は高まっていかない。
少林寺拳法は人づくりのための行であり、自己を確立しながら自分も他人も幸福になるための行にしなければならない。修行において大事にすべきことは何か、もっと言えば何を目的として修行するのかを自身に問うことが必要である。
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文 | /冨田雅志 |
演武者 | /飯野貴嗣 准範士七段 |
行として修練に取り組んでいるか
修練においては、相手を仮想の「敵」と見立てて、対抗的な意識で取り組み、手荒に扱っていることはないだろうか。
少林寺拳法が「行」であるためには、たとえば、守者になった場合には、「相手は私のために攻撃してくれている」という意識を持ち、攻者を務める場合には「相手に上手くなって欲しい」という意識で取り組むことが肝要である。
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文 | /中川純 |
演武者 | /飯野貴嗣 准範士七段 |
能動的に取り組む修練へ
修練では、説明を少なくし、拳士自身に考えさせたり、問いかけたりすることで、指導者から教わる受動的なものから、自ら行じていく能動的なものへと変換されていく。
このような修練を続けることを通して主体性を持った人間が育つようになる。
少林寺拳法が人づくりの行であるためには、能動的な修練の場を作り、主体的な人間を育てることが大切ではないだろうか。
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文 | /冨田雅志 |
演武者 | /冨田雅志 大拳士六段 |
点をつなぎ合わせ一本の線に
修練においては、動きをいったん止め、部分練習で法形のポイントを確認し、うまくいかないところ、ポイントとなるところだけを取り出して行うことも大切である。しかし、それはあくまでも点である。始めから終わりまで通しで行う全体練習を行い、点をつなぎ合わせ、一本の線に仕上げていくことが必要である。
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文 | /冨田雅志 |
演武者 | /冨田雅志 大拳士六段 |
繰り返しの中から法を学ぶ
修練では、法形を覚えることから始めるため、形を正すことに囚われがちである。
しかし、実際には体格や力の強さ、呼吸や間合いが人それぞれ異なるため、修練相手に応じて変化できるようにならなければ、法形としての価値は薄れてしまう。
出来る限り多くの相手と手を取り、数を掛け、法に適う動きに仕上げていくから法形たり得るのである。
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文 | /冨田雅志 |
演武者 | /中川純 正範士七段 |
合わせることで整える
道院の修練では、周囲と列や間隔を合わせることから始める。
そして、様々な礼法や所作を周りと合わせ、鎮魂行の唱和、基本諸法では道院長に合わせていく。
相対演練も相手と合掌礼、正中線、息を合わせ、そしてまずは攻撃に合わせて法形の動きを繰り返す。
「合わせる」とは単に人に迎合するという事だけでなく、深い意味が含まれている。修練において「合わせる」ことの積み重ねにより、身心が整えられ、金剛禅の調和の思想の体現へとつながっていく。
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文 | /中川 純 |
演武者 | /中川純 正範士七段 |
相対演練は宝の山
修練に動画を活用することは有効である。しかし、どのような心境で、どのように先を取ったのか。また、どう力を働かせたのかということまでは一切わからない。
日頃から本を読むことや講演を聞くことも大切であるが、それらを活かせるようになるのは簡単なことではない。
修練も日常もリアルなやり取りの中で学べる要素は数限りない。「相対演練」はまさに宝の山である。
撮影 | / |
文 | /冨田雅志 |
演武者 | /中川純 正範士七段 |
自他共楽の行
少林寺拳法の修練において技が極まった時、自身の達成感を得ることは悪いことではない。
しかし自他共楽の行と明言するならば、技が極まった刹那に攻者に対しての感謝やいたわりの気持ちが自然に湧くようになるまで昇華させる必要がある。
撮影 | /志村力 |
文 | /冨田雅志 |
演武者 | /中川純 正範士七段 |
守者と攻者を行じる
相対演練は攻撃を行う攻者と、防御反撃を行う守者が、互いに役割を入れ替わりながら行われる。
一人の人間が攻守双方の技法を学び、修得していくことは、相手の身になって考え、行動する訓練にもなっている。
組手主体の修練を深めていくことで、他者との人間関係を良好にし、より良く生きるための能力が養われるのである。
撮影 | /志村力 |
文 | /冨田雅志 |
演武者 | /中川純 正範士七段 |
攻者に対する認識
少林寺拳法は護身の技術という性格上、攻者は守者である自身に危害を与える役と設定し、その認識から修行が始まる。しかしこれは、修行の初歩の段階である。
修行を重ねる中で攻者は修練における最も重要なパートナーであると認識し、感謝の気持ちをもって修練に取り組めるようになったなら、技量の向上だけでなく、自他共楽の教えもおのずと理解できるようになる。
撮影 | /志村力 |
文 | /冨田雅志 |
演武者 | /中川純 正範士七段 |
自己コントロール
人生を思い通り生きるには、自分の身体と心をコントロールすることが必要である。拳禅一如の修行は、そのための訓練でもある。
肉体と精神の修行を重ねることで、自分自身を自在にコントロールできるようになり、その行動の結果である人生は、自らが望むものに変えられるのである。
撮影 | /志村力 |
文 | /冨田雅志 |
演武者 | /中川純 正範士七段 |
3つの視点をもつ
少林寺拳法の修練を通して、彼我の関係を俯瞰する能力を身に付けることができる。
これは、社会においても家庭においても穏やかに過ごすうえで必要な能力である。
自身の視点、相手からの視点、全体を俯瞰する視点。これら、3つの視点から判断し行動することが「半ばは自己の幸せを 半ばは他人の幸せを」の実践につながっていく。
撮影 | /志村力 |
文 | /中川純 |
演武者 | /中川純 正範士七段 |
相手目線で自己を見つめる
修練においては、自身から相手に向けての視点だけでなく、相手から自身を見る視点を持つことで自分本位の動きが抑制され技術の上達につながる。
日常生活でもこの視点を持つことで、身勝手な振る舞いは抑制され、相手の立場を考えた行動につながってくる。
修練で培ったものを日常生活で生かし、周囲の人と良好な関係を築く。
これが少林寺拳法で学ぶことの一つの価値である。
撮影 | /志村力 |
文 | /中川純 |
演武者 | /中川純 正範士七段 |
動禅
静かに心を鎮め、自己を鋭く見つめ、自己の内にある可能性に気づいていく静禅(座禅)に対し、易筋行は「動禅」(動く禅)と言われる。
相対演練を繰り返していくと、互いの呼吸が整うことで自然にリズム良く体が動くようになる。
更に没頭していくと考えるより先に体が動き、理に適った動きができるようになる。思考の入る余地がなくなることで感性が研ぎ澄まされ、ダーマを感得しやすくなる。
撮影 | /志村力 |
文 | /冨田雅志 |
演武者 | /守者/中川純 正範士七段 |
強さ
本当の強さを得るには、拠り所となる自分をつくることである。それは、相手を倒す強さを身につけることや、他人との比較や競争によって得られるものではない。
無手で身を護る技術を修めながら胆力を養い、どのような状況に陥ろうと自分の可能性を信じ、途中であきらめることなく事にあたっていく。
これらの努力を積み重ねる先に本当の強さがあり、自分を信じているからこそ、人は身心ともに逞しく成長していけるのである。
撮影 | /志村力 |
文 | /冨田雅志 |
演武者 | /守者:倉本亘康 准範士六段 |
理想境につながっている
他者の主張を排除し、自己の主張を通すばかりでは世の中が良くなるはずがない。人はお互いの尊厳を守り、尊重し合い、援け合って生きていく存在である。
日常も相対演練もまったく同じで、互いに尊重し合い、高め合い、共に楽しめる関係を築いていくことが大事である。
日々の修練の先に、開祖の目指された理想境がある。
撮影 | /志村力 |
文 | /冨田雅志 |
演武者 | /守者:飯野貴嗣 准範士七段 |
相手と向き合う
相対演練とは、相手と向き合う「行」である。
自分本位に動いていては、相手の動きに応じられなくなるばかりか、自分自身が崩れてしまう。
相手も同じようにダーマの分霊を持った霊止(ヒト)であることを認識し、相手の存在を認め、相対演練を重ねる中で互いの呼吸、テンポ、リズムを整え、他者との関わり方を学んでいくのである。
さて、日常生活において、周りの人と真剣に向き合う時間はどれぐらいあるだろうか。
撮影 | /志村力 |
文 | /冨田雅志 |
演武者 | /守者:冨田雅志 大拳士六段 |
修練における素直さ
法形修練で技がうまくいかなかったときに、その原因を相手に求めてしまう。
運用法で当身を入れられた時に、感情に任せてやり返そうとしてしまう。
いずれも「我(が)」への執着が成長の妨げとなっている。
相対での修練は、自己の内にある執着に気づかせ、それを取り除いていく機会となる。
目の前の現象をあるがままに認め、うまくいかなかった原因をありのままに受け止める素直さが必要である。
撮影 | /志村力 |
文 | /冨田雅志 |
演武者 | /守者:倉本亘康 准範士六段 |
心を鎮める
日常生活の中では、様々な出来事、種々雑多な感情が湧き起り、心をかき乱していく。その状況が続くと、“体”は今という時間に存在しながら、“心”は後悔や思い出などすでに終わった過去、不安感や期待感などまだ見ぬ未来に思考が飛んでしまい、心と体が離れていってしまう。
半跏趺座になり、瞑目し、「今」という時間に自己をつなぎとめる。心静かに調息する時間も拳禅一如の大事な修行である。
撮影 | /志村力 |
文 | /冨田雅志 |
演武者 | /守者:永安正樹 准範士六段 |
合わせる
技は、合掌礼の時から始まっている。
合掌礼で相手と呼吸を合わせ、気を合わせて構えることが心構えとなり、相手の動きに応ずることができる。
日常においては、相手に気持ちを向けること。相手の表情や呼吸の変化を感じ取り、「相手が今、何をしようとしているか」「何を言わんとしているか」を察することが、気配りや心配りになり、良好な人間関係を築くことにつながる。
撮影 | /志村力 |
文 | /冨田雅志 |
演武者 | /守者:飯野貴嗣 准範士六段 |
違和感を大事にする
技がうまくいかなかった場合に、その時に生じた違和感をそのままにしてしまってはいないだろうか。
組手主体の修練においては気づきの機会が多く訪れる。違和感はその気づきの始まりであり、それを放っておけば成長が止まるだけでなく、いつしかその違和感にすら気づけなくなってしまう。
大事なのは、言い訳をしたりごまかしたりすることなく、目の前の現象を正しく捉え、気づきへとつなげることである。
撮影 | /志村力 |
文 | /冨田雅志 |
演武者 | /守者:冨田雅志 大拳士五段 |
自信
人を倒すことや他人との比較によって得られる自信は、結果や相手に左右されることになる。自分ではコントロールできないものに依存した不安定な自信と言える。
本当の自信とは、結果や相手に左右されず、自己の可能性を信じられるかどうかだ。
それは、ダーマの分霊を持って生まれてきたことを自覚することから始まる。
修行精進して、肉体と共に自己の内面を変えていくことで本当の自信を得ることができる。
撮影 | /志村力 |
文 | /冨田雅志 |
演武者 | /守者:倉本亘康 准範士六段 |
金的蹴に対し、前脚を引き上げて片足立の膝受を行い、その足で相手の金的へ波浪脚撃を行う。膝受と言っても脚刀側部から足首を使って受けるが、真っ向から対抗するのではなく、相手の攻撃に添うように引き上げて受けるとよい。会得には数をかける必要があるので、防具等を有効に活用しながら無理なく修練すること。
撮影 | /加々見一 |
文 | /永安正樹 |
演武者 | /守者:倉本亘康 准範士六段 |
上段逆突~中段順突の二連攻に対して、連受・同時反撃で対処する。後ろ手で内受、前手で打払受を行うが、一撃目を後方に下がりながら受けると、反撃間合いが遠くなる。やや横転身に捌くことで相手の攻撃もよく捉えられ、内受・打払受ともに受けやすく、また反撃も行いやすい。
撮影 | /加々見一 |
文 | /永安正樹 |
演武者 | /守者:倉本亘康 准範士六段 |
たとえば、居捕にて送小手をかけた後、伏身の相手の上体に我の体重をあずけるようにして押さえ、腕を抱え込んで手首を極める。右脇で締め込むことで肘を伸ばさせ、左手は裏固のように手首を固め、さらに右手でかぶせ、大拳頭を極めていく。送小手からの滞りない連携が何より重要である。(あ・うんvol.54)
※居捕送小手と同じ動画です。
撮影 | /加々見一 |
文 | /永安正樹 |
演武者 | /守者:冨田雅志 大拳士五段 |
正座時に手首を握られそうになった場合、まずは膝を開いて体を安定させたのち、片膝を立て、鈎手守法をとること。送小手は若干後方へ引き込むように掛け手を行い、それから大きく肩を送ると無理なく掛けられる。立位の者が座位の者の手を捕った時点ですでに立位の者の体勢は前屈みとなり崩れているのだから、一見の立場の不利に惑わされず、冷静に対処することが肝要である。(あ・うんvol.53)
撮影 | /加々見一 |
文 | /永安正樹 |
演武者 | /守者:冨田雅志 大拳士五段 |
上段振突に対して膝を十分に使って、かいくぐるように身をかわす。そのまま後ろ足の引き寄せを利用して蹴り返す。屈身受をすると相手を視線で捉えにくくなってしまうので、気配の察知を常々怠らず、いかようにも対応できる残心をしておくこと。(あ・うんvol.52)
撮影 | /加々見一 |
文 | /永安正樹 |
演武者 | /守者:冨田雅志 大拳士五段 |
上段突をかわしながら外受し、蹴り返す。「外へ受け弾く」のではなく、「後方へ引き払う」ように受けるのが「外受」の特徴。また脇を締めるように受けることで防御から反撃への体勢が確保できる。外受突に比べ若干外へ開くように足捌きをすることで、蹴りの間合いを作ることができる。(あ・うんvol.51)
撮影 | /加々見一 |
文 | /永安正樹 |
演武者 | /守者:冨田雅志 大拳士五段 |
腕逆捕に対して鈎手守法で相手の攻撃をとめる。その際、腕逆捕の引き込みに体捌きを合わせ、相手の正中線上に位置すると技がかけやすくなる。
当身から掛手を行い、右手を内に倒して相手の手首に巻きつけるがごとく我の手首を返すと相手の体が崩れ出す。掛手を引きつつ足を捌いて投げる。(あ・うんvol.50)
撮影 | /加々見一 |
文 | /永安正樹 |
演武者 | /守者:倉本亘康 准範士六段 |
諸手で腕を捻じらんと、または担がんとしてきた際、相手の動きに逆らわないよう足を捌きながら鈎手守法を行う。当身した手を鈎手の先に添え、支点をずらさないようにしつつ、我の肘を相手の両腕の輪の中に差し入れるようにすると抜ける。同時に小手抜・寄抜を行うイメージで大きく抜くとよい。(あ・うんvol.49)
撮影 | /加々見一 |
文 | /永安正樹 |
演武者 | /守者:倉本亘康 准範士六段 |
上段突に対する内受を主体とした攻防法。内受に頼りすぎず、千鳥入身を併用することで攻撃をしっかりと捌いて受けること。
先(後の先、対の先、先の先、そして気の先)の会得・上達に適した法形であるので、修練度合いに応じてタイミングの工夫を図ると良い。(あ・うんvol.48)
撮影 | /加々見一 |
文 | /永安正樹 |
演武者 | /守者:冨田雅志 大拳士五段 |
振突に対し押受突した後、押受した手は相手の手首を、中段突した手は相手の肘に掛け、体を捌いて投げる。手首の引き下げと肘の引き上げのみで投げようとせず、梃子の理を使って肩を誘導するように投げると膂力を必要とせずに投げられる。(あ・うんvol.47)
撮影 | /加々見一 |
文 | /永安正樹 |
演武者 | /守者:冨田雅志 大拳士五段 |
体重の乗った振突は、遠心力も加わって非常に力強いため、体全体を使った受けが必要になる。差替足を用いながら体を入れて押受するが、すべてを同時に行うと力が充足せず、攻撃に負けてしまう。足、体、手捌きの順にそれぞれのタイミングをずらし重ねることによってその効果を発揮する。数をかけて会得すること。
(あ・うんvol.46)
撮影 | /近森千展 |
文 | /永安正樹 |
演武者 | /守者:冨田雅志 大拳士五段 |
鈎手守法で相手の引き攻撃を抑え、鈎手した手を手刀に見立て、相手の親指を引き切るように抜く。鈎手の際、我の手首を相手の手掌に重く乗せることで相手の握力が弱まり、掌内に僅かながらの空間ができる。その隙を逃さず、手首を回転させながら切抜をするとよい。(あ・うんvol.45)
撮影 | /近森千展 |
文 | /永安正樹 |
演武者 | /守者:倉本亘康 准範士六段 |
振突に対する反撃技。布陣によって異なるが、千鳥入身や差替足など、足捌きを併用することで、安定した体勢での力強い外押受が目指せる。また受けの際は、手首をしっかりと返すことで、腕刀に力が充実する。蹴り反撃は、受けに重心を乗せた逆の足で瞬時に蹴り返すこと。
(あ・うんvol.44)
撮影 | /近森千展 |
文 | /永安正樹 |
演武者 | /守者:飯野貴嗣 准範士六段 |
切小手が流れてしまい、相手の肘が伸びてしまった際に対処する。すぐに掛手を離し、腕刀を使って、伸びた肘に天秤を極める。捌手は切小手の動き(巻き込み)を止めず、手首を捕ったまま腰に引き付けるようにすると、相手の体勢を崩せ、天秤がより掛けやすくなる。
(あ・うんvol.43)
撮影 | /近森千展 |
文 | /永安正樹 |
演武者 | /守者: 永安正樹 准範士六段 |
上段突に対して、後方の肩を引くように体を開き、攻撃をかわす。同時に、後方の手で横押受、および掛手を併用して突きの軌道を変えることで相手の肩を下げる(顔面の急所が空く)。その刹那に、開身の動きを利用した上段順突で反撃を行なう。開身の際、自身の体が反りすぎると、体勢の復元から反撃の遅れが生じるので注意する。
(あ・うんvol.42)
撮影 | /近森千展 |
文 | /永安正樹 |
演武者 | /守者: 冨田雅志 大拳士五段 |
上段突に対する防御からの段反撃。相手の内手首(寸脈)を内受すると、突手が外側に流れる。頸脈に隙が生まれるので、すかさず受手を反転させ、手刀で切り込む。受けから反撃が一動作に近い快速を目指す。その後の連反攻も一挙動作を目指すが、節度も重要である。
(あ・うんvol.41)
撮影 | /近森千展 |
文 | /永安正樹 |
演武者 | /守者: 冨田雅志 大拳士五段 |
我の上膊を握られた際、空いている片方の手を相手の握り手の甲に重ね合わせて掛手する。握られた腕は上膊抜の要領で相手の腕に絡めつつ、内肘で我の掛手ごと相手の手首を挟み込み、引き落とすように捕る。腕だけで捕ると上体が崩れがちになるので、肘の落としと併せて後ろ足を若干引くように捕るとよい。相手の手首を生かしたまま、「コ」の字になるように極めるため、肘の使い方が肝要である。(あ・うんvol.40)
撮影 | /近森千展 |
文 | /永安正樹 |
演武者 | /守者:飯野貴嗣 准範士六段 |
相手が我の上膊を握ってきたときに逃れる技である。押し気味に握ってくるので、やや後方に肘を引きながら、そのまま腕を大きく回して相手の腕にかぶせるようにする。そのまま肘を上方に立て、指先を地面にまっすぐに突き刺すように伸ばすと抜くことができる。この際、手掌を内側に捻るように下ろすこと、また僅かに肩を後ろへ逃すようにすると無理なく抜ける。(あ・うんvol.39)
撮影 | /近森千展 |
文 | /永安正樹 |
演武者 | /守者:飯野貴嗣 准範士六段 |
相手の片手斜め上方に向けた閂捕にて十分に崩し、爪先立ちにさせる。すかさず相手の腕をかいくぐるように三足全転換し、ハンマー投げのように投げる。十分に閂を効かせて、相手の腕を我の目線より高く掲げておくと、自分の体勢を崩さずにくぐることができる。くぐる際に閂を緩めないようにすること。また、踵を返すようにしながらすばやく腰を切ってくぐるとよい。(あ・うんvol.38)
撮影 | /近森千展 |
文 | /永安正樹 |
演武者 | /守者:冨田雅志 大拳士五段 |
仕掛技の一つ。我の片手で、相手の手の甲側を優しく包み込むと同時に、もう一方の手で丁字を使って手首側を捕り、閂を極める。閂の極め方については両手それぞれの操作に感覚的なコツが必要なため、実際の師事の下、数をかけて会得すること。手首だけでなく、一気に肩まで力を伝えることで、相手を瞬時に制することができる。(あ・うんvol.37)
撮影 | /近森千展 |
文 | /永安正樹 |
演武者 | /守者:冨田雅志 大拳士五段 |
表投を掛けんとした際、相手の引きが強く、膠着気味になった際に即座に対応する。すばやく両の腕を反転させ、襟側の手首は腕巻のように絡め、袖側の手首は袖捕のように挟み込む。この際、相手の体が我に引き寄せられるように崩れるので、そのタイミングに合わせて足を開き、肩を送ると裏返るように投げることができる。(あ・うんvol.36)
撮影 | /近森千展 |
文 | /永安正樹 |
演武者 | /守者:永安正樹 准範士六段 |
相手が襟と上袖を握り、背負い投などに入らんとした際に対処する。相手が我の懐に潜り込まんとする刹那、我も同一方向に歩を進め、居つかないようにすることが重要。襟側の手首は腕刀で斜め下方に切り崩すことで腰を制し、袖側の手首は腕刀から肘関節部で、相手の肩を送るように巻き込んで体を開くと、攻者は自身の回転力も加わって投げられる。(あ・うんvol.35)
撮影 | /近森千展 |
文 | /永安正樹 |
演武者 | /守者:永安正樹 准範士六段 |
相手が一本背投などで投げんとしたときに用いる。相手の強い引き込みと、我の懐に入ってくる瞬時の回転を利用して投げるため、守者は攻者の攻めに動きを止めず、一息に技を掛けることが肝要である。鈎手守法によって、攻者の強い引きはそのまま自身の崩れへとつながるので、その流れに逆らうことなく体を捌いて投げるとよい。(あ・うんvol.34)
撮影 | /近森千展 |
文 | /永安正樹 |
演武者 | /守者:永安正樹 准範士六段 |
両手寄抜を封じんと、片手は引き、片手は押し込んできたときの対処法である。引きに対して、鈎手守法で我の体勢が崩れないようにする。その後、押し込みに対して相手の外側に体を捌き、握られた手首を中心に我の肘を相手の肘に打ちつけるごとく抜く。勢いを止めることなく、抜いた手を内腕刀に切り替え、前天秤を極めて相手を制す。(あ・うんvol.33)
撮影 | /近森千展 |
文 | /永安正樹 |
演武者 | /守者:永安正樹 准範士六段 |
我の寄抜に対し、攻者が妨害せんと、掴んでいた手を我の胸元に捻り押し込んできたときの抜き方。押し込みをいなしながら体を捻り、肘を相手側に向けて抜く。このとき腕を内側に巻き込み、内腕刀を相手の拇指第一関節に乗せるようにするとよい。また、上体の捌きに足捌きを併用することで、無理なく相手の攻撃をいなすことができる。(あ・うんvol.32)
撮影 | /近森千展 |
文 | /永安正樹 |
演武者 | /守者:永安正樹 准範士六段 |
腕十字固よりあおむけに倒した後、瞬時に我の片足を相手の頭部下に差し入れ、逃れんとする相手の回転を止める。相手の肘を我の両膝で包むがごとく挟み、片手で相手の腕を引き上げ、もう片方の手を相手の手と交差合掌させ、捻じるように押さえつける。引き上げと押さえつけのバランスが重要である。(あ・うんvol.31)
※腕十字固と同じ動画です。
撮影 | /近森千展 |
文 | /永安正樹 |
演武者 | /守者:永安正樹 准範士六段 |
捕技に属する仕掛け技である。相手の手首を引っ掛けるように軽くつかみ、相手の手掌が上を向くように捩じ上げながら、すばやく相手の裏側に回る。回ると同時に当身を入れ、返した手で相手の上膊部をすかさず巻き込み、内腕刀で急所を攻める。このとき、相手の肩をやや落とし気味に挟み締めるようにする。(あ・うんvol.30)
撮影 | /近森千展 |
文 | /永安正樹 |
演武者 | /守者:永安正樹 准範士六段 |
鈎手手法から当身の後、相手の左手・小指丘に掛手する。捌手は巻抜の要領で相手の手首に絡め、拇指背丘を攻めつつ、相手の肩を送るようにすることで、伏身にすることができる。手首の極めと肩の送りの連動が重要である。(あ・うんvol.29)
撮影 | /近森千展 |
文 | /永安正樹 |
演武者 | /守者:永安正樹 准範士六段 |
逆小手より、あおむけに倒した場合の固技。逆小手の掛手をほどくことなく、相手の手首を曲げたままにしておく。かつ我の前膝で相手の肘関節を押さえ、腕を伸ばした状態にし、相手の大拳頭を押さえ、人さし指を手掌内に巻き込むがごとく締める。真に極まると相手の腰が浮いてくるので目安とする。(あ・うんvol.28)
※逆小手と同じ動画です。
撮影 | /近森千展 |
文 | /永安正樹 |
演武者 | /守者:永安正樹 准範士六段 |
鈎手守法の後、当身から素早く相手の拇指丘に掛手をする。続けて小手抜を行い、相手の手首を内側に巻き込みながら、大拳頭付近に我の手首を転がすように乗せ、掛手と併せて相手の手首を極める。この一連の流れに二足転位の運歩を行うことで円滑に転倒させることができる。(あ・うんvol.27)
撮影 | /近森千展 |
文 | /永安正樹 |
演武者 | /守者:永安正樹 准範士六段 |
中段直突に対して前千鳥でかわしつつ、下受で防御、逆蹴にて反撃する。下受は腕刀を用いて、下方へ打ち切るがごとく受けはじく。このとき肩・腰の捻りが過ぎると、回転の反作用から蹴り反撃が遅くなるので、運歩による間合いの調整を図る。(あ・うんvol.26)
撮影 | /近森千展 |
文 | /永安正樹 |
演武者 | /守者:永安正樹 准範士六段 |
鈎手守法と当身ののち、寄足をしつつ、右手を相手の手首に巻きつかせるようにして肘を入れると、抜くことができる。相手が手首を抑え込むような攻撃をしてきた場合は、攻撃に抗うことなく半歩下がるか、体をやや開いていなすことで、相手の体勢を崩しつつ楽に抜くことができる。(あ・うんvol.25)
撮影 | /近森千展 |
文 | /永安正樹 |
演武者 | /守者:冨田雅志 大拳士五段 |
寄抜の鈎手守法は、手掌をやや内側下方に向けると、相手の手首を殺しやすく、握力を半減させることができる。抜く際は、相手に歩み寄るように我の右肩を鈎手の位置に近づけ、手首の支点部分がぶれないように寄抜をするとよい。(あ・うんvol.24)
撮影 | /近森千展 |
文 | /永安正樹 |
演武者 | /守者:冨田雅志 大拳士五段 |
上段直突、もしくは手刀打に対し、上体は流水受でかわしつつ、瞬時に蹴り反撃を行う。その名のとおり、流水のごとき円滑な体捌きと、瞬間の虚実を見極めた反撃が必要である。初歩の段階では、攻者に緩急を調節してもらい、数をかけ、攻防の間合いと機会を学ぶことが修得の早道である。(あ・うんvol.23)
撮影 | /近森千展 |
文 | /永安正樹 |
演武者 | /守者:永安正樹 准範士六段 |
我は中段を誘って待気に構える。相手の差込蹴に対し、前足をやや引き寄せて前鈎足になりながら、体をかわすと同時に下受し、水月へ蹴り返す。三合拳は、足または手の攻撃に対し、手で受けて足で反撃する技法であるが、決して手だけで受けるのではなく、必ず体捌きを用いて受けることが大切である。反復修練によって体捌きや受け手の用い方、攻防の間合や先のとり方のコツを身に付けたい。(あ・うんvol.22)
撮影 | /近森千展 |
文 | /飯野貴嗣 |
演武者 | /守者:川島一浩 正範士七段 |
吊落は送小手を掛けようとしたときに、相手が後方へ回り込んで逃れようとした場合の変化技である。相手が回り込む刹那に、相手の背中から手を離すように吊り上げると、相手の肩関節が極められ、上体が前に落ち込み、投げることができる。なお、別法として、相手が振り向きざまに裏拳を振り打ってきた場合は、右手外押受によって攻撃を封じ、その手を相手の肘内側に引っ掛け、上方へ吊り上げるようにして投げる。(写真は別法)(あ・うんvol.21)
撮影 | /近森千展 |
文 | /飯野貴嗣 |
演武者 | /守者:川島一浩 正範士七段 |
われは右拳をやや高めに挙げ、前腕を立てて構える。相手が手首をつかむ刹那、相手の拇指の谷を下方へ押さえ気味に、われの腹の高さにまで手首を下げて鈎手守法をとると、相手は手に力を入れることができなくなる。相手の手首とわれの手首を「十の字」にクロスさせるように肘を内側へ入れると、相手の手首は殺される。続けて、肘を脇腹へ引き戻すようにすると、抵抗なく抜くことができる。(あ・うんvol.20)
撮影 | /近森千展 |
文 | /飯野貴嗣 |
演武者 | /守者:川島一浩 正範士七段 |
外逆手捕は、逆手投と同じ要領で手首・肘・肩関節の逆をつくり、投げずに連行する技である。相手の体を崩すには、相手の肘を胴体から浮かせるように離し、鈎手をさせないようにするとよい。更に、相手の肘を肩の高さよりやや上に引き上げると、のけぞるような体勢になる。相手の肘が逃げないように、我の上腕部で抱え込み、時折大拳頭を攻めながら連行する。(あ・うんvol.19)
撮影 | /近森千展 |
文 | /飯野貴嗣 |
演武者 | /守者:川島一浩 正範士七段 |
送小手を掛けようとしたときに、相手が我に対して背中を向けるなどして逃れようとした場合の変化技である。送小手から変化する刹那、相手の左脇に我の右体側を寄せ、相手の左肩から腕全体を我の懐に引き込みながら、我の脇の下で相手の上腕部をしっかりと挟み、肩、肘の遊びを取り、“巻のつくり”を作る。そのまま全身で梃子を効かせながら身を沈めると、相手の左肩が落ち、体勢が完全に崩れる。(あ・うんvol.18)
撮影 | /近森千展 |
文 | /飯野貴嗣 |
演武者 | /守者:川島一浩 正範士七段 |
突天一は天王拳の基本的な法形である。天王拳において攻者は、一気合で左右の拳を、ほとんど同時に近いくらいの連攻撃を仕掛ける。いわゆる一挙連撃の攻撃である。守者は一撃目は体捌きによる受けを主とし、手による受けを従とする。また二撃目を受けると同時に、蹴り反撃を極める。上級者には攻防の節度と、更には連反攻が求められる。(あ・うんvol.17)
撮影 | /近森千展 |
文 | /飯野貴嗣 |
演武者 | /守者:川島一浩 正範士七段 |
片手投は、仕掛けの技法である。仕掛け技を修練するにあたっては、特に相手の機先を制し、虚を捉えるコツを会得するよう心がけたい。捕り方としては、相手の右手首に我の手を引っ掛け、外側から内へ腕を捻じりながら、左足を深く踏み入れて身体を反転し、左膝をつき、肘を上げながら、手首を殺して引き落とす。体捌きは二足全転換で、自分の身体が相手から離れず、内に入り込むように沈み込むとよい。(あ・うんvol.16)
撮影 | /近森千展 |
文 | /飯野貴嗣 |
演武者 | /守者:川島一浩 正範士七段 |
後ろにねじ上げようとして、手首を掴んできた相手の裏側に出て、まず鈎手で守る。続けて左手を添えて手首を殺し、手刀の形にした右手を、相手の左手首に巻きつかせ、足を捌きながら相手の正面に向く。すると相手の腕の形がS字になり、右肩がやや前方に出て、体が崩れる。崩しの動きに合わせて、手刀部分で自分の腹に引き落とすようにして極める。(あ・うんvol.15)
撮影 | /近森千展 |
文 | /飯野貴嗣 |
演武者 | /守者:川島一浩 正範士七段 |
木葉返は、相手の四指の逆を丁字手にして捕って、投げたり吊り上げたりする仕掛けの技法である。木葉は決して強く握りつぶさず、相手の体に力を伝える接点として、まず相手を一本足(片足荷重)の状態にさせて、すかさず四指→手首→肘→肩の順に関節の遊びを取って、回転させて投げることがコツである。(あ・うんvol.14)
撮影 | /近森千展 |
文 | /飯野貴嗣 |
演武者 | /守者:川島一浩 正範士七段 |
この法形の要点は、文字どおり「閂」を捕ることと「内天秤」を捕ることである。しかし、それ以上に大切なのは、「閂」と「内天秤」の操作によって攻者の腕・肩を体勢を崩す方向へ誘導することである。閂を捕る側の守者の腕の線と攻者の腕の線を一直線にさせ、攻者の肩の線に向かって落とす。修練においては、体を捌くタイミング、またその方向を修得したい。(あ・うんvol.13)
撮影 | /近森千展 |
文 | /飯野貴嗣 |
演武者 | /守者:川島一浩 正範士七段 |
攻者が一本背投を仕掛けてくるとき、守者は、攻者の動作に合わせるように足を運び、鈎手守法によって攻者の左手首を殺すことで、一本背投を無効にする。そのまま左手を攻者の手首に掛け、送りの操作によって攻者の左肩を前方へ崩し、肩を支点に振り投げる。特にこの技法は、攻者の勢いを殺さずに一気動作で行いたいものである。(あ・うんvol.12)
撮影 | /近森千展 |
文 | /飯野貴嗣 |
演武者 | /守者:川島一浩 正範士七段 |
三日月返は、攻者の上段直突を左手内へ引っ掛けるようにして受け、下へ押さえながら右平拳で三日月へ上振突を行い、その手を直ちに返し、頸中へ手刀打を返す技法である。特に、攻者の攻撃手を殺し、二撃目を封じること、そして直ちにその手を肘から引き抜き、頸中に手刀打を返すことなど、正確さに加えて速さと節度に重点を置いた修練を心がけたい。(あ・うんvol.11)
撮影 | /近森千展 |
文 | /飯野貴嗣 |
演武者 | /守者:川島一浩 正範士七段 |
押閂投外は、五花拳に属する「剛柔一体」の技法である。守者は、攻者の突き攻撃を半月受(開身突)でかわし、掛手を相手の突き手の甲にずらし、閂の形に捕って、手首関節の“遊び”を取る。もう一方の手は、攻者の肘関節内側に指を掛け、肘を引くと、攻者の体のバランスが崩れる。手・足・体を連動させ、二足半転身の体捌きで投げる。(あ・うんvol.10)
撮影 | /近森千展 |
文 | /飯野貴嗣 |
演武者 | /守者:川島一浩 正範士七段 |